Triumph(トライアンフ)とは勝利、凱旋、征服などの意味。そこから「征服欲に取り憑かれた将軍の孤独」という設定にしました。
永遠に支配されない 気高く美しい薔薇があると言う その薔薇が始まりで その薔薇のままで終わる 微睡みの中で出会うその花が 何時からか何処までも 遠く近く揺れていた 導かれるまま 遥か遠く未踏の荒地を 振り向かず突き進んだ 嘆きの涙も哀しみの責め苦も 払い除けるように 敢然と踵(きびす)を鳴らし 力で捩じ伏せた痛みは いつのまに抱えた傷だったろうか
癒されるくらいなら 轟音に呑まれて 忘れている方がいいと 知っているのに 埋まらない心の隙間が 甘い香りの期待に縋る 私は誰のものでもない、と 強がるその装いは 誰を真似た色なのか 名前さえ与えられたものなのに 溶けて焦れて崩れ堕ちて もう愛を強請るだけの唇 染み広がる零したワインのように 容易く蝕んで 君は君でなくなった 堕ちた傀儡(くぐつ)に価値は無い 今夜手にした恍惚は 朝には枯れ果て朽ちるだろう あの薔薇は未だ誘うように 陽炎に揺れて笑っている
いくつの夜を越えても 朝が来るたびに 先へと急(せ)ぐ焦りは拭えず 心は留まることを許さない 永遠に満ち足りない虚空は 容易く足元を掬う 名を刻み知らしめ 手にした大地の価値を問うても 形あるものである限り 失うことから逃れられない ならばこの身が滅びるまで 新しい星を掴みにゆこう 生きることこそが 時の流れに逆らえないのなら 花瓶にさした窓辺の花のように 朽ちてゆくことが定めなのか 時の環の支配から 逃れようと足掻くことが罪だと 誰もが知る摂理は 盾と矛で自らを罰し続ける
(2015年始〜4月頃)