「貴方の色は 幾多の色を含んだ 白」 貴方の世界に包まれて 最上の喜びを感じる 暖かな白い光が辺りを輝かせる 見上げれば、小さな蝶たちが 花びらのように 虹色に輝いて飛んでゆく 空も大地も柔らかな乳白色の“ひだ”に覆われて 音楽が響き 風が吹けば ひだは麦穂のようにさざめく そのたびに、ひだから花粉が キラキラと多彩な魔法の粉をふりまく 私はそこにそっと置かれていた半透明の卵を抱えながら 貴方の真ん中で身体を休める 卵はやわらかでみずみずしく よく見ると銀河系の渦のように星屑が散りばめられていて 触れると体温くらいに暖かい そしてとても懐かしい これは何かと問うと この世界を作り出す源なのだと、貴方が答えてくれた 周囲の“ひだ”から伸びてきた数本の手が 体を横たえる私に触れてくる 優しく髪を撫で 時々遠慮がちに足を撫で 好奇心いっぱいに私の翼で遊ぶものもいる 私は今 貴方の愛に包まれている 愛に触れている 愛を感じている 幸福の国はどこかと問われれば今この場所だと答えるだろう
「貴方の色は 幾多の色を集めた 黒」 太陽のように明るく笑う貴方の色は オレンジ色だと思っていました 真夏の海のように力強い貴方の色は 青色だと思っていました 軽やかにまっすぐに前を向く貴方の色は 緑色だと思っていました だけど貴方はとても暖かい とても優しい 漆黒 こんなに美しい闇の色を私は知りません 貴方の髪もローブも翼も真っ黒で だけれどようく見ればキラキラと 夜空に輝く星のように たくさんの色が散りばめられています なんて美しいんだろう 触れたくて、いくつも手を伸ばす 触れたそこから、貴方の色が私の色に溶けだす 混じり合えば やわらかな夜明けの色になる 貴方の鼓動を感じるたびに私の世界もざわめく そのざわめきにまた、貴方の鼓動が呼応する 私の世界に貴方がいること それが私の愛の源
(2013)