音の届かない水底で

音の届かない水底で
僕らは自由と戯れていた

君の背を飾る小さな羽が
泡の螺旋を描くたび
後を追う僕の肌をくすぐる

どこまでも深く続く僕らの宇宙
煌めく星の粒 すり抜けていく

天も地もない無重力
大きく足を蹴れば
容易く加速する


やがて景色は緩やかに
藍から青へ変わる
掻いた水は僕らを押し上げ
まっすぐに上へ 上へと導いてゆく


溢れる光 目も眩む閃光
未だ見ぬ世界へ
怖れず突き抜けよう


収まりきらない空の青と
太陽を浴びる樹々の緑
見たことのない生命の喜び
爪弾くリズムで水面を滑り
もう一度羽ばたけば
軽やかに風に乗り
気流を泳ぐ

天も地もない無重力
広げた翼は
僕らを無限の自由へ連れてゆく

森をくぐり谷を抜け
さあここから何処へ行こうか

(2016)