還る場所

貴方を腕に抱いて
青い水底へゆっくりと沈んでゆく
静かに 白くやわらかな海底に体を横たえ
そのまま半分重みを無くした感覚を楽しむ

しばらく待っていると 水面に大きな海竜たちがやってきた
だが海竜に肉は無く 白い骨をむき出しにして泳いでいる
海竜の白い骨から 白い粉がキラキラと降り注ぐ
まるで粉雪のように 私達にも降りかかる

貴方が何かに気付いて急に悲しそうな顔をした
この海底の砂は
あの子達の骨なのか、と
貴方の涙が 泡になって上へと昇ってゆく

私はその美しさに心を奪われる

私にとってここは故郷のような懐かしい景色で
ここが大好きなのだ、と教えると
貴方は涙を拭い嬉しそうに微笑んで

じゃあ、あの子達は還ってきたんだね、と

そうか 私はここに還りたいのかもしれない

いつか

いつの日か

(2013)