カーニバルの喧騒を離れ狭い路地を進むと、そこに若者がひとり座っていた。 暗闇の中、隙間から差し込むわずかな光がその人の輪郭をかろうじて照らしている。 こんな暗闇で寒くないのか、と聞くと、この闇は暖かいのだと答える。 若者はわたしを見上げ、うっすらと微笑むと地面に転がっていた石を拾い、それを空中に優しく浮かべてみせた。 驚いたことに石はキラキラと宙を漂い光を放ちながら、二人の間に留まった。 貴方の魔法は美しいのね わたしの言葉に若者は嬉しそうに笑ったが、すぐに首を横に振って、 こんな色の光は君のせいだよ そう、少し困ったようにまた光を浮かべた。 貴方が優しく光をつつく。 わたしもそれに触れてみる。 光にわたしの色が混ざる。 ビー玉遊びのように、わたし達は光と戯れる。 やがて辺りがほんのりと明るいことに気がついた。街の明かりは相変わらず遠い。 宙に散った小さな光達が球を描いて、二人の周りをまるで星空のように照らしていた。 キラキラと、あたたかい。 わたし達はいつの間にか一つのビー玉の中にいた。
(2014)